Cruise × Cruise

旅行・勉強・自炊など。気分はいつでも船の上。筆者は元旅行会社勤務⇒現在はメーカー人事

サンティアゴの思い出

今週のお題「遠くへ行きたい」

旅行に行けば行くほど、自分の住んでいる町も好きになる。

今までに訪れた中で一番遠いところ、それはチリ。
ローマ経由でサンティアゴ行きませんか、というお誘いを受けたのは今から4年ほど前のこと。こんなチャンスは二度とないと思って、弾丸旅程もいとわず、繁忙期も放り出して飛び立った。

「ローマ経由でチリへ行く」と聞くとすごく遠回りな気がするけど、乗継を含む総所要時間は30時間ほどで、当時はロサンゼルス経由に次いで効率的な路線だった(※往路に限る)地球って丸いんだなあとしみじみ思う。

梅雨明けの蒸し暑い日本を発ち、到着した早朝のサンティアゴは気温8度。

初日は、世界遺産バルパライソと、花時計が有名なリゾート地のビーニャ・デル・マルまで連れて行ってもらい、カラフルで美しい港湾都市の街並みや、イースター島から贈られた本物のモアイ像を見学した。

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季節は真逆だけど、それ以外は別に違和感ないな。そりゃあ移動は遠かったけど居心地がいいし、機会があったら住みたいな。というのが初日のざっくりした感想だった。

だって、何といっても食事が美味しい。お酒も安い。淡白な白身魚のソテーに、ダイナミックな赤身肉のステーキ、レモン果汁とシラントロ(パクチー)を効かせたサラダ。どれも素直に美味しいと感じるものばかり(コーディネーターの方が素晴らしかったのかもしれないけれど)

その日の夜はコパ・アメリカの決勝戦、PKでアルゼンチンを下してチリが優勝したらしい。突然の叫び声に驚いて歯ブラシを洗面台に落とし、むき出しの排水口へ見事にダイブした。お祭り騒ぎは朝まで続いていた。

サッカーに興味はないし、人混みも苦手だけど、なぜかホテルのベッドで聞く勝利を祝う歌声は心地よく感じて、いいじゃんチリ、チャンスがあれば駐在したいな、なんて思っていた2日目、サン・クリストバルの丘からこの景色を見て、衝撃を受けた。

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南国っぽい木々と雪を冠した山並み、そして街を覆うスモッグのコントラストがあまりにも新鮮で、「知らない町だ」と思った。急に、家族や友人の顔が浮かんだ。今振り返ると、ホームシックにも似た感傷だった。

その後は、日本でもおなじみのコンチャ・イ・トロのワイナリーを見学させてもらった。広大なワイナリーはとても美しく、貯蔵庫はアトラクション仕立てになっていて、たっぷり試飲もさせてもらえて、それはそれは楽しい時間だった。でも、不思議ともう「ここに住みたい」とは思わなかった。

3日目の朝、ローマに戻った。長くて短い旅だった。

ローマとミラノを回っている間に熱を出して、死にそうになりながら成田空港へたどり着き、漫画喫茶で3時間ほど仮眠を取ってから、帝国劇場で『エリザベート』を見た。翌日は日生劇場雪組の『ローマの休日』を見た。このご時世ではあらゆる方面から怒られそうな休日を過ごして、やっぱり日本が一番だとしみじみ思ってしまった。

そういえば、つい先日食器の整理をしていて、出所不明のワイングラスが出てきて捨ててしまったんだけど、今思うとあれはコンチャ・イ・トロでもらったやつだった。なんだか、もったいないことしたかなあ。