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旅行・勉強・自炊など。気分はいつでも船の上。筆者は元旅行会社勤務⇒現在はメーカー人事

渡辺麻友さんの芸能界引退に寄せて

まゆゆこと、渡辺麻友さんが芸能界を引退される。

渡辺麻友契約終了のお知らせ / 尾木プロダクション

このブログでは一切言及したことがなかったけれど、私はいわゆる「大声新規」だ。父の影響でAKB48にハマり、大学生の頃は基本的に毎日劇場公演に応募して、当たれば万難を排して駆けつけるスタイルで、月に1回くらいは劇場に入っていたし、社会人になった後も、推しの移籍と共にHKT48推しとなり、推しの生誕祭のために午後半休で博多に飛んだこともあった。

TeamB 3rd「パジャマドライブ」公演で48Gの世界に知った私にとって、麻友選手は原点にして唯一無二のアイドルだった。自らのアイドル哲学を愚直なまでに全うし、恋愛スキャンダルとは無縁で、趣味さえも初期は二次元、後には宝塚という「ヲタクを不安にさせない」ジャンルのものばかり。

趣味を語るときのハイテンションなまゆゆが大好きだったので、彼女が宝塚を好きになってくれて本当に嬉しかった。麻友選手が宝塚を見に来るようになってからは、何度か客席でも見かけたし、机を挟んだ写メ会では、花組版『オーシャンズ11』のダニーとテスをふたりで真似して撮ってもらったこともあった。何より、好きな人が自分の好きなものを語ってくれるということが本当に幸せだった。

あまりのビジュアルの完成度に「CG」と呼ばれ、ぴっちり分けた前髪とツインテールを死守していた渡り廊下走り隊の頃も、二十歳を過ぎて自然と綺麗なお姉さんに移行していったあとも、麻友選手はずっと可愛く、綺麗で、美しかった(個人的には「君はメロディー」のまゆゆのビジュアルが一番好き)

あまりにストイックで、いつも自分と戦っているように見えるから、私は彼女のことを麻友選手と呼びたくなってしまう。

彼女はいつだってベストを尽くし、素晴らしいステージを見せてくれた。その中でもとりわけ印象に残っているのは、さいたまスーパーアリーナでの卒業コンサートと、2013年に開催された第3回AKB48紅白対抗歌合戦で歌った「君の名は希望」だ。

乃木坂46生田絵梨花さんをピアノ・コーラスとしてゲストに迎え、彼女のピアノ伴奏一本で歌い切ったその歌声は、この上なく透き通っていて清らかで、それでいて強い意志を感じるような、アイドルという世界の美しいところだけを掬い上げたかのような一幕だった。なぜかゲスト審査員として呼ばれ、知らない歌・知らない歌のオンパレードで所在なさげにしていた松坂慶子さんが涙ぐんで絶賛されていたのも印象深い。

AKB48を卒業してからも、ミュージカル『アメリ』の主演、朝の連続テレビ小説なつぞら』茜役など、精力的に活動されていた。何をしていても真面目さがにじみ出るような、彼女の硬質な個性は女優としても稀有なものだと思っていたので、もうテレビや舞台で彼女の演技を見られないと思うと、やっぱり寂しい。

健康上の理由ということで、残念だけど引き止め難く、今はただただゆっくり休んで、心身の健康を取り戻してほしいなと思う。本当に色々なものを犠牲にして頑張って来られたと思うので、この先どんな人生を選ぶのだとしても、選んだ道でどうか幸せでいてほしい。というか、幸せにならないわけがないと思っている。

ずいぶん昔のNHKの特番で、AKB48のメンバー全員が自分の夢を聞かれていた。他のメンバーが「女優」「声優」などと答える中、五十音順故にトリを飾ることになったまゆゆは、無邪気な笑顔で「考え中!」と言っていた。その笑顔があまりにも可愛くて鮮明に覚えている。ゆっくり休んで、元気になったら、また新しい、素敵な夢を見つけてほしい。

ありがとう、そしてお疲れさまでした。いつかどこかの劇場で、元気そうな姿を見かけられたら嬉しいな。