弾丸旅行記 2泊5日でウィーン・ブダペスト
今週のお題「遠くへ行きたい」
去年の7月5日と6日に、シェーンブルン宮殿でミュージカル『Elisabeth』の野外コンサートが開かれた。今回は、このコンサートに参加するため、2泊5日でウィーン・ブダペスト(各1泊)を旅した時の思い出話。
出発まで
開催が発表された2018年10月、行かないという選択肢はない、と思った。再演雪組『エリザベート』で宝塚にハマり、大学ではドイツ語を勉強し、2012年には卒業旅行を兼ねて本場ウィーンで『Elisabeth』を鑑賞、ウィーンへの訪問は通算4回、ついにはゼミ論文まで「死の舞踏」について書いた私、もし行かなかったら一生後悔する。卒業旅行にも一緒に行った友人に即連絡し、Twitterでも意思表明して、必ず実現させると誓った。
一方、問題もあった。当時の職場では、業務の都合で絶対に火曜日は休めなかった。曜日に関係なく、3日以上連続で有休使う人もほとんどいなかった。しかも、2018年10月時点では働き始めてたったの4ヶ月。2019年7月時点でも1年ちょっとしか経ってない状況で、悠長に1週間休みを取るというのはとても現実的ではない。*1
それでも悲壮感は一切なくて、「コンサートが金曜・土曜の開催で良かった。金・月と会社を休めば十分参加可能だ」と思っていた。
善は急げと旅程を考える。考えるといっても、
①関空発着
②木曜夜または金曜朝出発、月曜帰国
③金曜夜または土曜夜のコンサートに参加
というところまで固定されているので実際のところ選択肢は多くない。
木曜夜発ならエミレーツしかないし*2、金曜朝発の欧州内乗継で行くとなると、ただでさえ短い現地滞在時間が一層短くなる上、コンサートは土曜に限られてしまう。万一、金曜のチケットしか取れなかったら?
……となると、必然的にエミレーツで行くしかない。
そう、ごく個人的な弾丸旅行の心得、中東経由を活用せよ。
実は前回のウィーン旅行も3泊6日、カタール航空だった。
特に会社員の場合、仕事終わりで乗れる中東経由深夜便は本当に便利だ。欧州内の主要都市であれば、翌日のお昼には目的地へ到着するし、帰国日も昼過ぎまでしっかり遊べて素晴らしい。フライト時間が長い?気にしない!
そして出来上がった仮のスケジュールがこちら。
木曜:仕事終わりにエミレーツで関空発(機中泊)
金曜:昼ウィーン着 夜シェーンブルン宮殿でコンサートに参加(ウィーン泊)
土曜:終日ウィーン(ウィーン泊)
日曜:16時頃の飛行機でウィーン発(機中泊)
月曜:18時頃関空着
この時点でそこそこの弾丸旅行だが、私と友人は思った。意外と滞在時間が長い、これならブダペストも行けるのでは?と。二人でウィーンを訪れるのは3回目で、メジャー・マイナー問わず相当数のスポットが既に訪問済みである一方、エリザ界隈の聖地であるブダペストは未だ訪れたことがなかった。もちろん私たちがウィーンで時間を持て余すことなんてありえなくて、何度でも何日でも訪れたい場所なのだけど、今回に関してはコンサートに参加できたらそれで目標達成と言えるので、欲張ってブダペストに足を延ばすことに決めた。
木曜:仕事終わりにエミレーツで関空発(機中泊)
金曜:昼ウィーン着 夜シェーンブルン宮殿でコンサートに参加(ウィーン泊)
土曜:ブダペストへ移動し、終日観光(ブダペスト泊)
日曜:グドゥルー宮殿を見学してから、16時頃の飛行機でブダペスト発(機中泊)
月曜:18時頃関空着
こうして「最近体力の低下が激しくて……」が口癖のアラサーとは思えない、アクティブでアグレッシブな旅程が完成した。
ウィーン
1時間ほどの遅延を経てウィーンに到着し、現地で友人と合流。*3
たった一泊の滞在なので、ホテルは奮発してグランドホテル・ウィーンを選択。リンク沿いに宿泊できるというだけでも感慨深いというのに、想像をはるかに超えるクラシカルで豪華な客室にうっとり……
するのもほどほどに、わずかなウィーン観光の時間に選択したのは家具博物館。家具博物館はエリザベートの一番有名な肖像画があることで有名で、そのほかにもハプスブルク家、特にフランツ・シシィ・ルドルフに関する家具や装具がふんだんに展示されており、ファンにはたまらないスポット。写真撮影ができるのも嬉しい。
これは、ルドルフが作った「トルコの間」を再現したコーナー。何度見ても笑ってしまう。厨二病多感だったんだろうなと思う。でもやっぱり、既婚者なのに狩猟小屋にマリー・ヴェッツェラと思しき裸婦画飾るのはアウトなんじゃないかな。
さて、今回のコンサートは奮発して前から二列目・お土産付きのVIPシートを購入。300ユーロ越えのそこそこ良いお値段だったけど、日本からはるばる飛んでいくことを考えたらチケット代はもはや誤差。全員着席するコンサートといえど、平場の会場では小柄な日本人は不利なので、舞台から近いのが一番。
間違いなくSS席です、ありがとうございました。
優先入場、開演前と幕間のフリードリンク・ビュッフェでの軽食、プログラムやグッズがたっぷりのお土産と、文字通りVIPな気分を味わうことができて大満足。しかも、作曲者であるリーヴァイさんのお席がめちゃ近くて、開演前に写真を撮ってもらった。「日本から来てくれてありがとう!!」みたいなこと言われた。シェーンブルン宮殿在住のリーヴァイさんとしては、盛大なおホームパーティーみたいな気分だったんだろうか。
コンサートは、上がりまくった期待値をさらに悠々と飛び越えていく素晴らしいものだった。そうはいってもコンサートだし、1時間程度なのかなと想像していたら、まさかのほぼフル尺、舞台衣装あり。名曲「Ich gehör nur mir」は、本物のシェーンブルン宮殿を背にして歌うことで、王宮からの決別という強い意志が、今までに見たどのバージョンの演出よりも際立っていた。「シェーンブルン宮殿にも王宮にも寄り付かなかったエリザベートの物語をシェーンブルン宮殿で上演する」というある意味「キッチュ」な企画自体が、『Elisabeth』の世界観の延長線上にあるものだと思うから、あの場に立ち会うことができて本当に良かった。
お土産でもらったフランツとシシィのアヒルちゃん。キッチュ!(褒めてる)
ブダペスト
夢のような一夜が明け、まさかの6時半起床。レイルジェットへ飛び乗り、ブダペストを目指す。
マーチャーシュ教会のシシィ像。午前中しか見学できない日だったので、グランドホテル・ウィーンの朝食を諦めてまで急行した。あのコンサートの翌日にブダペストへ行って、マーチャーシュ教会を訪ねないわけにはいかない。
フォアグラとパプリカが一度に楽しめる、観光客にうってつけの一皿。
かの有名な国会議事堂は、レインボープライドが開催されるため見学中止になっていた。残念だけど、「旅行にはやり残しがあったほうが良い」と自分に言い聞かせる。次回の楽しみも必要だ。この日のブダペストは尋常じゃない暑さで、早起きと疲れがたたり、ホテルに戻って昼寝。
ドナウの真珠と謳われる夜景。そうか、ここも「真珠」の街だったな、と今ブログを書いていて思う。やっぱり真珠に外れなし。
若者たちが河川敷に等間隔に座っている光景。2019年7月当時の感想は「えっ、鴨川?」、2020年5月現在は「ソーシャルディスタンスがしっかり保たれているね」
ブダペストといえば温泉。入れそうなタイミングが最終日の朝しかなかったので、温泉併設のDanubius Hotel Gellertに宿泊した。客室は華美ではないものの、リバービューのバルコニーがついていてうれしい。
水着着用の温泉なので写真撮影も可能。水温はぬるめの30~35℃で、「朝風呂でさっぱり」というよりは、「朝からプールに入ってぐったり」という感じになってしまったけど、古代ローマ風の豪華な温泉を満喫した。早朝だからすごく空いていたのもよかった。
その後、プライベートツアーでグドゥルー宮殿へ。自力で行けなくもなさそうだったけど、ホテルまで迎えに来てくれる上、追加料金を払えば空港まで送ってくれると聞いて利便性を最優先にした。
館内の写真撮影ができないのが本当に惜しい。エリザ関連の旅行において、グドゥルー宮殿は、王宮(シシィ博物館)の次点、シェーンブルン宮殿と同等の必見スポットだと思った。展示しているものも展示方法もウィーンのそれと全く違う。たとえばスターレイさん、名前は聞いたことがあっても、写真を見たことありますか?あるいは他のハンガリー人の側近は?グドゥルー宮殿なら会える。
王宮とシェーンブルン宮殿をはしごしても、見たものの分量が増えるだけで、見え方が変わるということはないけど*4、王宮とグドゥルー宮殿の両方を見学すると視野が広がる。エリザベートという人を考えるとき、ウィーンから見たシシィ像だけでは片手落ちだということが改めてよくわかった。
ショップに並ぶグッズひとつとっても、ウィーンでは「鏡の間」の白いドレス姿が主流だけど、グドゥルー宮殿ではオーストリア・ハンガリー二重帝国戴冠式の紺色のドレス姿のグッズがすごく多くて面白い。私も、戴冠式のドレスが一番好きだ。
苦肉の策で、購入したポストカードを撮ってみた。スミレ色のシシィの居室。ウィーンには、シシィの趣味が全開の居室って展示されていない気がする。
終わりに
行きは別々だったこともあり、友人と一緒の飛行機で帰れるだけでとても嬉しかった。ひとりで行動するのも好きだけど、ひとりだと帰路についた瞬間に旅行が終わってしまう感じがする。誰かと一緒に飛行機に乗っているときは、その人と別れるまでは旅行の続きのような気がする。彼女のお祝い事があったので、ケーキとシャンパンを予約しておいた。
ハネムーンの方、記念日の方、お誕生日の方、何でもない日の方、とにかくお金さえ払えば手配できるのでぜひどうぞ。
弾丸旅行といえば、行先は近場のアジアが中心だと思う。私自身も1泊4日で韓国に行ったことがある。
けれど、その気になれば、有休2日で大好きなウィーンまで飛んでいける。目的を絞れば、ちゃんと満喫できる。月曜の夕方関空に着いて、翌日の仕事は本当にしんどかったけど、2泊5日でもヨーロッパへ旅行できるということがわかり、心の底から勇気が湧いた。
仕事があって家族がいて、長い休みを取って自分のためだけに使うのは当分難しいかもしれないけど、私はまた、何度でもウィーンに行ける。そう確信できたことが何よりうれしい旅だった。