総合旅行業務取扱管理者試験に独学で合格した勉強法
- 総合旅行業務取扱管理者試験とは
- 試験科目・出題範囲
- 勉強法(試験3ヶ月前まで)
- 勉強法(試験3ヶ月前~1ヶ月前)
- 勉強法(試験1ヶ月前~直前)
- 試験当日の心得?
- 総合旅行業務取扱管理者試験に挑戦しよう
総合旅行業務取扱管理者試験とは
今日は旅行業に関する国家試験である「総合旅行業務取扱管理者試験」について。
旅行業法では、旅行業者等に対して、営業所毎に「国内または総合旅行業務取扱管理者試験に合格した者」を「旅行業務取扱管理者」として1名以上*1選任し、管理及び監督業務を行わせることを義務付けています。
平たく言うと、自分一人で新しい旅行会社を立ち上げようとする場合や、勤めている旅行会社が新しく開設する支店の唯一の従業員になるとき、その人は国内または総合旅行業務取扱管理者試験に合格している必要があります。
なので、旅行会社では上記試験の合格が管理職への昇格要件だったり、資格に合格すると一定の資格手当が賃金に上乗せされたりします。また、旅行業に関する実務経験が直近5年以内に3年以上ある場合は、研修を修了することで一部科目の受験が免除になることもあって、受験者の多くは実際に旅行会社等に勤務している人たちです。
じゃあ旅行会社の従業員にしか意味のない資格かというともちろんそうではなくて、私は全ての旅行好きにとって勉強してみる価値のある資格だと思っています。なぜなら、勉強すること自体が楽しいし、旅行に行ったり計画を立てたりするときに少なからず役に立つから!あと、シンプルに、自分の好きなことで国家資格が取れるのってちょっとお得な感じがしません?
私は5年間旅行会社に勤務していましたが、上記の研修を経ることなく、入社1年目のときに自力で総合旅行業務取扱管理者試験に合格しました!しかも当時は法人営業をしていて、業務の中で試験で出題されるような知識を得る機会はほとんどなし。*2なので、ほぼ完全に独学でした。
- 旅行会社で働いていて、そろそろ「総合」取らないとヤバい人
- 将来旅行会社で働きたいので「総合」を取っておきたい人
- 趣味の旅行をもっと楽しみたい人
いずれの方にも活用いただけるような学習法について書いていきます。
ちなみに、上記の通り「旅行業務取扱管理者」になるための試験には「国内旅行業務取扱管理者試験」と「総合旅行業務取扱管理者試験」の2種類があり、また別途「地域限定旅行業務取扱管理者試験」というものもあります。大は小を兼ねる、ではないですが、総合旅行業務取扱管理者を持ってれば全ての旅行業務を扱うことができるので、最初から総合旅行業務取扱管理者の資格を狙うのがお勧めです。仮に全科目同時に合格できなくても、国内旅行実務・海外旅行実務の合格は翌年に繰り越せるから、国内→総合って2年計画のトライをするくらいなら、1年目から総合を受験して、駄目だった科目は来年また受けようって感覚でいいんじゃないかと。*3
試験科目・出題範囲
ここではざっくりと紹介。難易度は個人の感想です。
旅行業法及びこれに基づく命令(「業法」)
難易度:★(易しい)
旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(「約款」)
難易度:★(易しい)
「業法」と「約款」は試験1ヶ月前くらいから勉強を始めましょう。あんまり前からはじめても忘れます。問題のノリは運転免許の筆記試験と似てます。ちょっとした引っかけがあったりする。選択肢で迷ったら、「旅行者に利するのはどちらだろう?」って考えてみるとよいです。
後述のテキストをざっと通して、あとは過去問で演習。大体聞かれるところは毎年同じです。直近で法改正があった場合は必ずと言っていいほど出題されるので、情報のアップデートを怠らないようにしましょう。少しでもテキスト代を節約しようとブッ〇オフで買った古いテキストで勉強しようとしている場合は特に要注意です(実例)
国内旅行実務
難易度:★★★(難しい)
おそらく多くの受験者にとって最大の難所。ざっくり言うと「国内運賃・料金と実務に係る各種約款」と「観光地理・観光資源」が出題されます。
観光地理も日本国内に限られる分、やたらとマニアックな問題が毎年何問か出るし、特に要注意なのは何と言ってもJRの運賃計算!「運賃計算を制する者は旅行業務取扱管理者試験を制する」と言われているとかいないとか。現代において仕事としてJRの運賃を手計算している人が全国に何人いるのかわかりませんが、考え方は実生活でも役に立つので勉強して損はないです。四の五の言わず乗継割引の適用ルールを頭に叩き込もう。ようやくJRをある程度マスターして国内航空券の勉強をしようとしたら、年齢の考え方や予約開始日等がいちいち違ってキーッとなるのもお約束。
海外旅行実務
難易度:★★(やや難しい)
「国際航空運賃・料金」、「出入国法」、「旅行英語」、「観光地理・観光資源」、「海外旅行実務」が出題されます。
国内同様、運賃計算がハイライト。こちらは国際航空運賃に関する問題が出題されます。最初は全く手に負えないかと思いきや、概念をきちんと理解できると、安定して正解できるようになります(国内実務のJRはよっぽど精通している人でない限り運ゲー要素を排除しきれないので……)JR以上に日常生活では使わない計算になりますが、頑張りましょう。
旅行英語はEチケットお客様控えやホテルバウチャーのような読みやすい書類が出題されることが多いので、英語に苦手意識がない方なら安定した得点源にできます!海外旅行実務は空港コード・航空会社コード、最低乗継時間、国別の査証要否、ホテルやクルーズの基礎用語といった、旅行会社の人が実務経験で答えられる貴重なパートになっています。現職の方は取りこぼしNGですね。
観光地理は膨大すぎるので時間が許す限りコツコツ積み重ねていくしかないのかなと。広く浅く出題されるので地域による知識の偏りをできるだけ減らすのが大事。
勉強法(試験3ヶ月前まで)
旅行パンフの切り貼り学習法
もはやこれは勉強法というかひとつの趣味と言ったほうが適切かもしれません。やり方は簡単、旅行会社や駅などに置いてあるパッケージツアーのパンフレットを持ち帰り、気に入った旅程表を切り取ってノート等に貼り、暇なときに眺めるだけ。パンフレットと紙のノートの代わりに、WEBサイトとOneNoteでももちろんOKです。フリープランの旅程表はあまり役に立たないので、添乗員付きのツアーのものを複数社分集めるのがおすすめ。
いつも何気なく眺めているパッケージツアーの旅程は、
といった点を考慮しつつ、旅行のプロによって造成されたものです。なので、ツアーの旅程を眺めているだけで「〇〇と××って意外と近いんだな」とか、「どうやらこのエリアで一番人気の寺院は△△らしい」とかいうことが自然と見えてきます。こういう、一見するとふわっとした知識が、実は「国内旅行実務」「海外旅行実務」での得点源になるんです。
観光地理の勉強って果てしなくて、文字だけで「にっぽんの温泉100選」を覚えようとしたって、よほどの温泉好きでない限りは難しいです。まして総合旅行業務取扱管理者試験の場合、範囲は全世界。国内外の河川、山岳、遺跡、寺社仏閣、教会、近代建築、興味が湧くものもあればそうでないものもあるはず。なかなか関心が持てないジャンルについては、「パッケージツアーで回るようなところだけは最低限覚える!」という目標をもつとだいぶ取り組みやすくなるのでぜひお試しください。
旅行パンフを眺めているのが試験勉強になるなんて、本当に最高の資格ですよね。笑
観光地理の問題集を解き始める
基本的には3ヶ月前からの短期決戦がおすすめの資格ですが、観光地理・観光資源だけはインプット量がモノを言うので早めに着手します。国内外の観光地理だけが1冊にまとまっているテキストと問題集を1セット購入して、問題集は試験までに3周しました。
旅行業務取扱管理者試験 標準テキスト 1観光地理<国内・海外> 2020年対策 (合格のミカタシリーズ)
旅行業務取扱管理者試験 標準トレーニング問題集 1観光地理<国内・海外> 2020年対策 (合格のミカタシリーズ)
勉強法(試験3ヶ月前~1ヶ月前)
テキストを通読する
ここからは平日も毎日1~2時間は学習時間を捻出していきます。テキストはユーキャンのこれ。定番人気だけあって本当に使いやすいです。他社のテキストがダメってことは全くないので、店頭で見比べて自分が見やすいものを選ぶといいと思います。*4
2020年版 ユーキャンの国内・総合旅行業務取扱管理者 速習レッスン【増税に伴う変更にしっかり対応! 】 (ユーキャンの資格試験シリーズ)
テキストを決めたら、まずは最初の1週間程度でざっと一読しましょう。覚えきれなくても全然OK、どんどん読み進めていきます。
JRと国際航空券の運賃計算を理解する
1周目を読み終わったら、業法・約款のことは一旦忘れます。1ヶ月間程度を目途に、攻略に時間のかかるJRの運賃計算と国際航空券運賃計算を集中して勉強していきます。隙間時間で観光地理のインプットも継続。
ひたすら問題演習(その1)
2ヶ月前頃から問題演習に入ります。この問題集は問題と解答が見開き形式になっているのでおすすめ。これも試験前までに3周解くことを目標にします。問題量が多いので、初見と2周目にスムーズに解けた問題は3周目以降はスルーしてよいです。
2020年版 ユーキャンの総合旅行業務取扱管理者 過去問題集【増税に伴う変更にしっかり対応! 】 (ユーキャンの資格試験シリーズ)
勉強法(試験1ヶ月前~直前)
セルフ模擬試験
試験1ヶ月前になったら、前年度の過去問で模擬試験をしてみましょう。合格のボーダーラインは各科目で60%の正答ですが、この時点でおそらく50~60%くらいは得点できるんじゃないかと思います。業法・約款は2ヶ月ほどまえにテキストを一読して、問題集を1周解いただけだと思いますが、それでも合格点またはそれに近い点が取れてしまうんです。この2科目は合格点を取るのは比較的簡単だけど満点を取るのは限りなく難しいので、限られた勉強時間を有効に使うためには、試験直前まではあまり触れないのが吉。
ひたすら問題演習(その2)
1ヶ月前を切ったら、模擬試験でわかった自分の弱点を補強しつつ、既に解いたことのある問題を繰り返し解いて確実に正解できるようにしていきましょう。あまり手を広げすぎないほうがいいです。観光地理については間違った選択肢として挙げられている施設についてもきちんと復習します。
今年に入ってからの法改正がなかったか確認して、あれば忘れずメモしておきます。
独学のみだとどうしても不安な場合は
大原予備校が模擬試験と解説をセットにした1日完結の集中講座を実施しているので、こういうのに参加してみるのもありです。正直、総合旅行業務取扱管理者は数ヶ月間予備校に通ってまで取得するような資格ではないですが、最新のトレンドや出題傾向について短時間・安価で知ることができるのはリーズナブルだと思う。
試験当日の心得?
旅行会社の方へ:こっそり受験はできないと思うべし
当時新入社員だった上に、受かる自信が全くなかったので誰にも言わず会社制度の受験料補助も使わずひっそり受験するつもりだったのに、いざ会場に行ってみると受験者にも試験官にも社員がたくさんいて、普通にバレました。笑
これは受からないとちょっと恥ずかしいぞ、と気合を入れ直した。
直前に確認するのは観光地理がおすすめ
特に世界遺産に登録されたばかりの場所などを復習しておきましょう。直前まで粘ると、「これさっき見たとこだ!」ってなる確率が結構高いです(自分の経験&同期談)
総合旅行業務取扱管理者試験に挑戦しよう
5,000字に及ぶ無駄な長文をお読みいただきありがとうございます!旅行好きをアピールできる資格としては世界遺産検定なんかもありますが、なんといっても国家資格ですよ!まだまだ続くおうち時間を活用して、総合旅行業務取扱管理者試験の勉強をはじめてみませんか?
※なお、令和2年度試験についての詳細はまだ発表されていません!中止になったらごめんなさい!!